【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
ちと音を立てて】拍手を浴びせるのが他者と自我のどちらなのか、そして死ぬことと迷執することどちらへの歓迎なのか、自他も去来も区別のつかない語り手には判断の基準がない。
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ふいに羽音が聴こえて顔を上げると煙る空にたくさんのオオスカシバが踊っているんだ、火の粉、空から降り注ぐひかりの鱗粉、透明の翅、夢ではない、夢ですらない、
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オオスカシバの成虫の翅は、羽化したてのころは灰色だが、飛翔によって鱗粉が脱落し、無色透明の翅が現れる。
その灰色の、いわば生死や自他のグレーゾーンを描出す
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