【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
しい。いつも、私は正しいのだ」と確信していた。それはそれで確かに(不条理なのはムルソーだけではなかったという意味で)一面的には真理だったが、この詩の語り手はそのようにはひらき直れていない。
過去の記憶、網膜に焼きついた他者の像を編集して、言わば自演している【架空】の自我の脆弱を、思い知ってしまっている。
【溶ける幼虫】が象徴するその脆弱な自我は、自身に入射する他者の視線によって、なん度も焼き滅ぼされる。
そしてなん度も蘇る。羽化し成虫となり、より強固な我執となって。
この【オオスカシバ】が示唆するところについては、冒頭ですでに述べた。
自我の死と我執の強化に、【ばちばちと
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