【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
よう、私はここで生活していました、していたことがあります、
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【炎上する私の家の中で生活している私も炎上する、なんの比喩もそこに介入できない】と述べてから、思い出したように【かつてここに私の家があったころ、と、前置きを】する。
自他の区別がついていない語り手には、現在と過去の区別も明瞭でない。まさにあの異邦人ムルソーの語り口だ、「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私にはわからない」(上掲書より)
「ママンを埋葬した日と同じ太陽」に憑かれ焦がされながらムルソーは、最後まで「私はかつて正しかったし、今もなお正しい
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