【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
同じことじゃないか。語り手はそもそも、自他の区別がついていないのだから。
自我に養われた虫食いの視野は、網膜を焼く「他者の視線」の延焼で焦げる。
【焼け焦げて歪む写真の像のように】、映され入射したそのときは写「真」だったはずの記憶が、投影として他者へ反射するそのときには、他者ごと自我を焼き殺すような歪んだ認知に化ける。この視線は歪んでいる。
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やがてこの炎は私の家をも飲み込むだろう、ばちばちと音を立てて炎上する私の家の中で生活している私も炎上する、なんの比喩もそこに介入できない、かつてここに私の家があったころ、と、前置きをしよう
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