【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
 
あたかも、声なき鰓弓の射る的外れの矢。
 彼方の的を見すぎたために、水晶体が【氷晶】(3章)に凝り固まり、極度の仮性近視に陥っている。

 この詩は、
【ただ、外人としてありつづけたかった私の、瞳や、鰓の、最果て】(4章)
 繰り返すが【外人】とは、つまり「他者」だ。
 たとえばラカンの発達論に、鏡像段階という仮説と「寸断された身体」という概念がある。幼児が他者を鏡として自身の身体イメージを確立するという内容だ。これにアンナ・フロイトの提唱した自我防衛機制のひとつ「投影」の概念を絡めてみよう。
 そしてこの詩の【瞳】を、以下のように想定してみよう。

 語り手はかつて、眼に入射し
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