【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
 
もかかわらず詩は、題を四つも持っている。【●】の記号で銘打たれた四つの章題だ。

 詩の舞台は「眼」。1、3章が「眼前」(開眼)の、2、4章が「眼中」(瞑目)の世界を描出する。
「眼前と眼中」はひとつの視野、【白い文法の群生する野原】(1、4章)を綴り出す因果だ。どちらも因だがどちらも果で、果はつねに因より大きい。その連鎖に呪縛され、この詩という果が【最果て】(4章)に至った。ここはヴィトゲンシュタインが述べた世界の限界、釈迦が説いた凡夫の迷妄「自我」の極地。
 詩は死んだ星のように、最果ての重力をひらききり、みずから吐いたあらゆる言葉を吸収し圧縮する。
 光背の逆光に炙りだされる逆喩の
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