【HHM2参加作品】詩の入り口に立つためにー『母乳』ちんすこうりなー/深水遊脚
る状態だと解釈されるかもしれない。この精神論に対する反感というのも、社会になんとなく共有されている。母乳が出る出ないは、個々の母親の身体的な条件によって様々であり、もちろんそれは愛情の有無とは無関係である。共有されやすい、いや、かつて共有されやすかった「母乳」=「愛情」という考え方をうっかり口にすれば、八つ当たりも込みであらゆる苛立ちが一気に注がれるかもしれない。母乳の出ない(出にくい)母親、粉ミルクを選んだ母親、粉ミルクを選ばざるを得なかった母親がいたら、苛立ちはもっと鋭い怒りに変わるかもしれない。答えを母乳に限定する理不尽さを、理由なく受け入れるはずもない。それゆえに主体は曖昧なのかもしれない
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