【HHM2参加作品】詩の入り口に立つためにー『母乳』ちんすこうりなー/深水遊脚
 
ない。主体を明らかにして、適当な理由を押し付けて片づけるのに都合のよい悪役がいては、「その人が悪いんだ」「その人がおかしいんだ」ということで片づけ、それ以上のことを、読む人は考えなくなってしまう。

 視点を変えて、少数派にシンパシーを感じる見方というのも想定してみよう。幸せそうな母親と子供が最初に登場するが、「ママたち」というふうに複数形で登場することに注目したい。問いの主体はおそらく一人。空気の読めない問いを、止むに止まれず発する。それを受けてママたちは、答えることなく怖がって去って行ってしまう。この一連の流れで際立つのは、問いの主体の孤独感だ。「家に帰る道」とあるが、この場合の家は、次に
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