峯澤典子詩集『ひかりの途上で』について/葉leaf
 
向かって、肉をつまみ上げるように親指と人さし指に力を入れると、乳房の張りがふとゆるみ、生温かい雪解けが広がる。どの一滴も無駄にしないよう、もう片方の手でおさえた器で慎重に受け取る。
       (「夏の木」)

 さて、子を産んだ母と子の関係は豊かで複雑である。子は母親に対し様々な行動を要求する。母親は子という存在に対して、搾乳という行為に導かれるのである。もちろん、ここで明示的に語られてはいないが、子の存在は母親に大きな喜びをもたらすだろうし、母親の人生に対する思想を幾分か変化させるだろう。そういう意味で、子は母親に対して非常に豊かな生態学的意味を持つ。つまり、子は母親に対してきわめて抒
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