峯澤典子詩集『ひかりの途上で』について/葉leaf
生み出す読者への働きかけなのではないだろうか。抒情性とは、作者が自らの感情を吐露することにあるというよりは、作者の生み出す作品世界が豊かな生態学的な意味を担い、読者に生活に根差したような情緒的・知性的・意志的反応を引き起こすこと、そこに本質があるのではないだろうか。
出産後すぐに、搾乳、という言葉を覚えた。生まれた子は別の病棟で眠っていた。飲むもののいない母乳を自分で絞り、専用の容器に入れて冷凍保存する。赤ん坊が自力で乳を吸えるまでに回復したら、それは解凍され、哺乳瓶に移される。
赤ん坊と離れていても、小さな空腹を見透かすように、母乳は乳房に迷いなく満ちてきた。乳房の丸みから乳輪に向か
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