美人慣れ/小川 葉
 
が多いと、それは鑑賞というよりも、作業に近く、オペレーション、しかし悲しいかな、男の本能、その作業をしなくては、信号が赤に変わるまで、横断歩道を渡り切ることさえ出来ないという、たいへん危険な目にもあったのである。
(それから急ブレーキの音を聞き、万事休すの体験をした。運が悪ければ、あなたはこの恐るべき美人報告書を、読めなかった可能性がある。私は美人の恐ろしさを、あなたに伝えるために生きている。それほど美人とは恐ろしいものである。私は美人に殺されかけた。)
だから私は美人を避けた。美人から、逃げて逃げて、逃げたそこにまた美人。もはや美人から逃れることは出来ないと、さとったのである。
それからの
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