キャンディと王様・前章/にゃんしー
めて強く頷いた。
手塚山高校入試前日、海の部屋には、いつにない緊張感が満ちていた。
乙彼・水樹・海の3人とも黙り込み、ノートをこするシャープペンシルの音と、
マグカップに注がれたホットミルクをすする音だけが響く。
時折、海が数学に関して質問をすると乙彼と水樹が手早く答え、また問題集に向かい合う。
「……隣の部屋からなんか、聞こえない?」
乙彼が、ふとそう言った。
「空が、DVD観てるのかも……」
海が、シャーペンを動かす手を止めないまま、そう返す。
空というのは、海の二つ下の妹である。
「ちょっと、注意してくる」
乙彼がそう言い、立ち上がって部屋から去
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