春の夢/碓氷青
のチョウは彼らの上をぐるぐると回る。そうやってチョウは彼らの上を回って、美しい彼らのこころを繋ぎ合わせる。こころの繋ぎを喜んだ種子は、チョウにありがとうと伝えると、すべてを終えたとさとって、また土に眠ろうとする。このときに眠ろうとする彼らは色を失い、背伸びをやめて、静かになる。ボクラは知らないが、このときの美しさをいちばん知っているのも、チョウだった。チョウはどういたしまして、とは言わない。少しずつ、少しずつボロボロになっていく翅をおもいきり浮かべて、またどこかで眠ろうとする種子のこころを繋ぎ合わせようとするのだ。だけど、こころを繋ぎ合わせるチョウも、少し頑張りすぎると、空にこころを残して、ぽたっ
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