束の間の街/ヨルノテガム
 




 捨て猫あいさつしない
(こニャニャちは なんて言わないニャ)

 ビール缶から雨水こぼれた
(つらつら ぽたん )

 扇風機の首が折れる
(ブウーン ゴキッ )

 夜が地べたを這っている
(のっぷり のっぷり )

 高層ホテルが墓石
(しーん しーん ちーん )

 夜中が地下を新たに作り出す
(ともだち増えるよ モグラさん )

 抑揚のない笛が流れた


 信号機は砂時計のように
 意味なく顔色を変え
 環状線で巡る都会の動脈は
 ひとつの四角い小部屋の末端で
 ひっそりと静脈へ入れ替わる
 蝉の羽音が火薬をこぼし

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