束の間の街/ヨルノテガム
花火を空へと打ち上げた
猫紳士は二本足で会釈し
(ボンジュールボンソワ )
浮浪者がビールのプシュっと開ける音に溺れ死ぬ
(いやあ今夜は三度も死んじまったぁ )
夜空を覆いつくす扇風機の羽が回り
(ブウーン 気もちのよい風 )
月がパラパラ漫画に跳ねて跳んだ
(こっちへおいでよ )
こんな夜はもういらない
こんな夜ばかりじゃ
(だけど夜を愛す 見えないものが見えてくるから )
若者の人影は木々の森へと隠れ消える
(朝、わたしはわたしのままなのだろうか )
昼の環状線で眠る冷たい電車の空席に
暗い若者は よこ笛を吹いて 無視され続けた
抑揚のない
線のような
音を吹いた
(彼はきっと
とびきりの
流れ星を
見たんだワ )
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