春の夜 ひいながたり/そらの珊瑚
 
昨年リストラされた前任者の女を思った。くわばら、くわばら。
 大垂髪(おすべらかし)は黒々と、白い肌をより白く引き立たせていた。妙齢を少々過ぎたといえども、充分美しい姫である。
「それでね、もっと軽くて華やいだ着物が欲しいとおねだりしてみたの。いうなれば、羽衣のような」
 いつの時代にも。モードは女の楽しみのひとつである。
「姫のため、探してまいりましょう、と言って殿は昨日お出かけになり、まだ帰ってこない、というわけよ。まさか、他所の姫にところへなど、遊びに行っているわけではあるまいな」
「大丈夫でございますよ。殿を信じてお待ちしていましょう」
「そうね。それはそうと、なんだか下の部屋
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