夜更けの紙相撲・2014.2月/そらの珊瑚
 

 夏は蝉のやかましいまでの鳴き声を浴びながら、おじさんは石を磨く。
 秋は柔らかくなった陽射しの中、おじさんは石を磨く。
 ただ、ひたすらに。頭から雫をしたらせて。
 冬はどんなにか寒かっただろうと思うけれど、寒い日こそ石が美しく見えたのは何故だろう。
 その石は地元で採れる小松石という名前だったと思う。

 先日岐阜県にある明治村で移築された夏目漱石の住居を見る機会があった。するとその庭に根府川石で作られたと書かれた庭石があった。根府川石もまたふるさとの近くで採れる石である。
 私は瞬時におじさんのことが頭に浮かんだ。その後その座敷で琵琶の演奏を聞かせてもらいながら、私は石を磨い
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