時里二郎詩集『ジパング』について/葉leaf
に読者に働きかけているのである。
ところで、時里の虚構の作り方は、世界の文法をゆがめていくことで成立している。彼の散文詩は明確に一つの世界を作ろうとしているが、にもかかわらずその世界はたくさんの裏切りに満ちているのだ。この点、断片的に書かれる不条理詩とは異なっている。断片的な不条理詩はそもそも世界を作ろうとしない。だが時里は世界を作ろうとしながら、その世界を次々とゆがめていき、最終的に奇妙で整合性の取れていない擬世界が出来上がるのである。引用部を見てみよう。朝食の説明があるが、それが木の実一個に過ぎないというところでまず裏切りがある。朝食についての整合的な説明による整合的な世界形成というものが
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