掌編「悪夢」/イナエ
 
ロボットが、ぼくの横で、地上を見ることをすすめている。ロボット。ここでは、人間は働かない。すべての作業は、それぞれ専門化されたロボットが行う。子育てするロボット。人間のための新しい食品を開発するロボット。最近、詩を作るロボットが、学者ロボットたちによって、開発されたときく。しだいに狭められていく、人間の価値、生きる目標、矜持。定年を心待ちする人が密かに、しかも、確実に増えてきている。今後、ロボットたちは、どのような対策をたてるのだろう。

 隣にいるロボットは、明るい微笑みを浮かべた。これは早く地上の姿を見ろという催促なのだ。これ以上彼らを待たせると、分解室へ連れていかれそうだ。定年を前にして
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