屋上/きとり
ちっちゃい頃、自分だけの場所、
誰も知らない、独りになれる場所を探してた。
そして5歳ぐらいに一つだけ見つけた。
苔だらけの階段を上り、朽ちかけた材木にしがみつく。
子供の手には届かない梯子に、
無理やり手を伸ばして飛び移った。
誰もいない、知らない建物の屋上に、
紐を結わえて、色んなものを運びこんだ。
そこに上るのはいつも命がけの気分で、
その背中のあわ立つ感覚がたまらなくて何度も通った。
誰にも教えなかった。教えたところで皆が来れるはずがない。
自分だけだ、好き好んでこんなとこを登
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