OMMADAWN/无
(呆然とする私を彼らは映画館で観ている)
雨は部屋の中にいる私の身体も、情け容赦なく貫いていく。目に見えず、濡れることもないから普通なら気付かないだろう。そして気付いた時にはすべて手遅れだ。ほとんどの人たちの人生のように。私はたまたま気付いたが、気付いたことに何の意味や価値があるというのか。世界も私もこのまま何ひとつ変わることはない。まるで残酷な数式のように。鼻の奥で何かが焦げる臭いがする。カチャカチャという金属の音が、空耳という結論を先頭に鼓膜を震わせる。
(生まれて来なければ良かったと知るために生まれてきたという結論)
この部屋を訪れる者は滅多にいない。雨は決して止む
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