啓典の記憶/2012
た。
すると窓の外から男の子の声がします。
「ねえ、カノープ、まだ起きてるかい?起きてたら一緒に火刑を見に行こうよ。君は覚えてないかも知れないけど、僕はグラビティ。君が寺院で生まれた時に、僕は五歳で、僕達は一緒に洗礼を受けたんだ」
カノープは驚いて、窓から聞こえる声に答えます。
「ねえ、グラビティ、どうして私の家を知っているの?」
グラビティは即座に答えます。
「そんなの簡単さ。パノプティコンが教えてくれたんだよ。さあ、もうじき火刑が始まるよ」
カノープはわくわくして布団から飛び出ました。可愛らしい余所行きの恰好に着替えて、戸を開けて月明かりの外に出ました。
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