HAYABUSA/ハァモニィベル
 
、まっすぐに一本通っている。
 この快適な道路には、他にまったく車はなく、私の運転する一台の軽自動車だけが、いま悠然と走っている。好きな速度で、滑るように走りながら、何気なく、ふっと、左手の大きな家のブロック塀から、蜜柑の木が、 “安心しろ、やがて何も変わらない” と告げるように、樹ち繁る濃緑の葉影に沢山の黄色い玉を点灯させているのが見えた。それを過ぎてすぐの辺りで、道はゆるやかに大きく右に膨らんでカーブし、ハンドルを戻し切らぬうちに、今度は、さしかかった陸橋を登りはじめる。道が、跳ね上げるように高々と地面を上へカーブさせると、いきなり、広がった空の右手で、風と直角に翼を広げ、静止飛行する隼が一
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