人と蛇の寓話/まーつん
に乗せた
女達を狂わせた
この皺ひとつない顔に
今では、苦悶の影が差し
息も乱すことなく
試練の山を駆け登った
この強靭な身体に
今では、じっとりと
冷汗をかいていた
かつて少年の頃
私はこの蛇と契約をした
一人の男が望み得る
総ての幸いと引き換えに
自らの魂を差し出すことを
宝石の
価値も解らぬ愚か者が
一掴みの肉と、ダイヤとを
惜しげもなしに、引き換えるように
だが刻は満ち
゛総て゛を手にした筈の今
その代償の大きさに
私はようやく思い至った
この身に宿る、魂への愛しさ
それは、己が翼を愛でる
鳥の想いにも似て
それに比べれ
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