病床のドッペルゲンガー/yamadahifumi
 


そうして何も派手な馬鹿らしい事はやらかさなかった

・・・私の人生は素晴らしかった

私はずっと幸福だった

・・・なのに、何故だろうか?

こうして病室の個室に一人ぽつんといると

何か言い知れぬ寂しさを覚えるのは

私の生涯はこれまでずっと幸福だったのに

私はふいに自殺したくなるくらい、今、寂しい

その時、私が老齢の極みで

ふいに思った事は絶対に他人には洩らせない事だ

それは一抹の死の前の寂しさ、そして

私の人生そのものが亡骸のような、夢の様な

一つの幻想ではなかったのか、というその不安

そして今、死の前にいる私に残されて
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