心の目が開くと/いねむり猫
 
いして 柔らかく輝き 
もともと そうであったように 呼吸を始める

私は ただ 
その美しく 危ういバランスに見惚れる

顕微鏡で覗いた カンラン石のように
ひしめきあう輝きで構成された 巨大な蛇のような時間が

ゆっくりとうねって 世界をこする

万華鏡の回転で生じる 色とりどりの眩暈が、
荘厳な 深海の 発光器を灯す魚の群れが 
ある朝 一斉に道路を覆う 金木犀の花弁が
溶鉱炉から滴る銑鉄のような夕日が

こすられた世界から 過剰な美しさとして こぼれ 
また 大切な糧として 吸収されていく 

 
喫茶店の床に落ちている赤い包み紙は
それを落とした
[次のページ]
戻る   Point(3)