空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
子を被っている。チョンビーナの人は褐色だ。
「ドビクサリ!」
隣に座っているおっさんがぼくの左頬にくしゃみを吹きかけてきた。べとべとになった。ドビクサリと聞こえた。この国に着いて初めて聞いたチョンビーナ語だ。ドビクサリの洗礼を受け、少し居場所を得た感じがした。まだ気が早いか。おっさんは笑ってる。ぼくはべとべとだ。
いくつか街らしきものを通り過ぎていく。どこがスッピリカンカンなのかわからないので、バス停ひとつひとつ、チョンビーナのおっさんに「ここ、スッピリカンカン?」と首を縦に振ってくれるまで聞いた。
バスの運転手はでぶっちょの男で、夜なのにサングラスをはずさない。運転手
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