空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
してしまいそこに立ち止まって一種の感動のようなものに襲われる。
草刈さんと弁吉君と一緒に、昔の浅草の軽演劇のようなものを覚えて、東京で活躍している妄想を一週間程続けていたその日、洗面所で顔を洗おうと一歩足を進めたその、一歩でできてしまった。一歩で東京での三人での軽演劇ができてしまったのでびっくりした。あれ?できてる。一歩で。なんだこれ。やってることは一歩なのだが、できてることは完全に軽演劇で東京で活躍してしまっている。
外を見ると、非常に軽快に洗濯ものがぺらぺらと風に揺れていた。
そのままぼくは鼻唄を歌いチョンビーナ人たちで溢れる雑踏の中を手を振りながら歩く。
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