空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
 
  返ってきても来なくてもいい。ただ手を振りたくなったのだ。そして、懐かしい気分になって、郷愁のこもった江州音頭を口ずさんでみた。
「こりゃどっこいせー、えい皆様たのーみーまーすぅー、あーこれからは、よーいやせーのかけごえたのみますぅー♪」
 その瞬間、雑踏のチョンビーナ人たちが一斉にぼくを見て笑いだした。腹がよじれるほどみんな笑っている。風に帽子を飛ばされて狼狽しているどころの騒ぎではない!民族衣装を笑いで踊らせてゆらゆら揺れている。ぼくが発露にになった笑いから来る揺れが逆に漂って来て酔わされる。
 
  決まった。江州音頭が完全に決まってしまった。チョンビーナでは、笑いとして通じるらし
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