空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
 
肉が噛みつぶされそれがビールに溶け合わさった味のような魔法なようなものに掻き消されて行く。子供の頃から通算しても、こんなにだらだらしたことがない。
  最初、草刈さんと弁吉君に抱いていた気持ちも、大方ぎとぎとの妄念だった気がする。
  妄念で何かを捕まえなければ生きていけなった。それはたとえたい気持ちと似ていたのかもしれない。
  
  人間とは、心地よさのことを言うのだろう。
  
  そして、なんだか音が、耳にスコンと入るのである。パチンと手を叩くとそれが気持ちいい。「あ」が気持ちいい。いちいちうっとりしてくる。車を閉める音が遠くから「バン!」と聞こえると、「バン!」にジーンとして
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