空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
たと、また、裸足で歩く足音の、間がいい。
でも、決して憧れてはいけないと思った。ああは、なりたくはない。そう思わなくては、ふんどしに乗せられて、ずるずると草刈さんの世界に引きずられていく。草刈さんがふんどしなのは、あくまでもイメージだが。実際はトランクスだった。
銭湯からの帰りの道端にきれいな赤い花が咲いている。バラではないが、茎には棘がある。光を浴びて、穏やかにこちらを見ている。
犬が歩いている。黒い犬だ。首輪だけして、自由に歩いている。どこか、気の毒そうな表情で、舌をだらんと垂らしている。
心の中で、歌手の矢野顕子に津軽海峡冬景色を歌わせていた
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