空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
 
、ぼくは風になっている。微笑みはきっと少女のようで、頬を赤らめ、ああ、お湯の風になって。
  
  鳥が鳴いた。
「ずぅえなびゅー。」

「だいぶええ気持ちになっとるみたいやのう。わし、あんまり浸かるとのぼせるで、さき上がるわ。」
「ぼくも上がります。」 
  脱衣所に出ていく草刈さんの尻は、垂れていて、布袋の笑顔のようで、もちもちと、それでいて萎びていて、美しかった。
  弁吉君の体は、髪が長いせいもあってか、女のように艶やかに光っていた。信長公は森蘭丸をこんなふうに見ていたのかなと思った。
  草刈さんの尻を見て、老いるっていうのもなかなかいいもんだなと思った。ぺたぺたぺたと
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