空にさよなら日記/八男(はちおとこ)
 
ても、便所のことを弁所と書こう。ぼくは弁吉君を愛さずにはおられなくなった。
  そして草刈さんがこう言ったのだ。
「弁財天の弁に、漢数字の万。弁君に万ちゃんか。くっくっく。」

  三人で街をぶらつく。チョンビーナ人の家は、家というよりも、小屋である。みんなそれぞれの小屋に住んでいる。なかなかおもしろい。小屋は錆びれる宿命にある。錆びれた部分は他の色彩の鉄板や、木板で補修されていて、マチスの絵みたいだなと思って、マチスともちょっと違うなと思いなおした。穴の開いた子供の服に張り付けたアップリケのようなものかと思ったが、それも違うなと思いなおした。今日のたとえは冴えない。
  
  「たと
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