電脳と死の雨/hahen
風に乗って、開いた傘の下から吹き込んでくる。服が、髪が、手が、ちょっとずつ濡れていく。すぐに車一台分の異世界があった場所に到着する。そしてぼくは初めて雨が上がった瞬間を見た。それは思っていたほど壮大じゃなく、余韻もない。おじさんが立っている。ぼくは静かに眠りに就こうとしている。
傘を一本なくして、ぼくは友人の家へ向かった。多分、そこに置き忘れてきたに違いない。友人は快く迎え入れてくれた。ベースの重低音が玄関の奥から廊下のフローリングを伝わってくる。
リビングに備え付けられた家族用のコンピュータが起動しているのが、最初に目に留まった。
「古い楽譜ならインターネットでいくらでも閲覧できる
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