電脳と死の雨/hahen
 
きるからね」
 友人の親父さんがクラシック音楽の楽譜を印刷している。その横で友人がお気に入りのベースラインを爪弾いている。

 そして、ぼくたちは一度死んでから、もう一度死ぬ。

 印刷されて吐き出された楽譜は見るからに複雑な和音や抑揚を事細かに指示してくる、それは多分雨音に近いメロディーになるだろう、採光の優れた友人の家から温かなまどろみを受け取りながら、ぼくの身体は冷え切っていく。指先が冷たい。友人の親父さんがキーボードを慣れた手つきで打ち込んでいく、入力の一回、一回ごとに死に終わった人間が焼かれ、新しい人たちが形而上のコネクションを毛細血管みたいにびっしりと張り巡らせていくので、多
[次のページ]
戻る   Point(2)