電脳と死の雨/hahen
ぼくはそれを目撃する。
その小さく狭い異世界はぼく一人が立つので精いっぱいの面積しかなく、浸水した靴の中で喘いでいた踵や土踏まずがそっと安堵する、そこはこんなにも濡れた世界の中で唯一乾いている。少しずつ雨粒に侵略されながら、まだその一か所だけはぼくたちの世界の内側じゃない。
多分、車が停まっていたのだろう。乾いた箇所の形も長方形で、ぼくはそうに違いないと勝手に判断した。
ここに車が停まっていた。しかし今、車はどうしてか(発車して移動したからか)なくなっている。
そこから、ぼくたちは一度死んでいく。死んでいかなくてはいけないんだ。
まず、雨を見つめよう。ひたすらに連打されるア
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