北の亡者/Again 2014睦月/たま
れが北の亡者のほほ
えみに見える。はるかな大陸からやって来た四季
の王者が笑っているのだ。
古びたペアリフトに乗って友がやって来た。私は
頂を降りる。丸い山頂を背にして、少しきつい斜
面を不器用に滑り落ちると、一気に風が私の身体
にうず巻いた。
風はすぐ身近に潜んでいたのだ。
(一九九三年作品)
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一月の槍ヶ岳に登ったのは一九八〇年前後のことだった。その当時は暖冬が続いたとはいえ、一月の北アルプスの山稜は半端な覚悟では登れない。それなりの訓練と装備を身につけた四〜五名の仲間と、パーティを組んで登ることになる。
例年、九
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