北の亡者/Again 2014睦月/たま
の中央アルプス。少しはなれて、どっし
りと太い山容の御嶽山。さらに北に目を移すと、
ノコギリ歯のような北アルプスの山稜。かすかに
槍ヶ岳のするどい山頂が確認できる。そして日本
海へと続く山々。
見わたす空には一片の風さえない。広大なパノラ
マに目を奪われる。私の足元は一八三四メートル。
美しすぎる風景に天然の色を付けると、死んでし
まった絵ハガキのようになってしまうことがある。
風を失してしまったからだ。
私は今、生きた絵ハガキの中に居る。一片の風さ
えないのに、このパノラマは生きている。大気か
ら滲み出ているからだ。見えないものさえ大気の
中に滲み出てくる。私にはそれが
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