人柱/岡部淳太郎
 
て人びとは荒野の上で
誰かに
何かに
常に屈しながらも
心の中心のいちばん柔らかい部分を
必死に守りぬいてきた
人びとの
無言の祈りの声は荒野から発して
はるかな地平線にまで届くかと思われた
こともあったが
ふいに
空の一点 地上に最も近い空間で
切断された
祈りの線は途切れて
力なく地表に横たわった
誰かが
何かが
祈りを撃ち落としたのだ

それも
これも
すべては仕方のないことであるのだが
荒野の 罅割れた大地
流れない血管の間に
人柱は変らずに
黙然と建ち 立ちつくしている
諦念も
憧憬も
失って
淋しさ以外のあらゆる感情から遠く隔た
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