人柱/岡部淳太郎
隔たって
彼等は立ちつくしながら
風に吹かれる度にますます純粋になってゆく
私はいま
この荒野の上に立っている
この寒々とした広さの中で
あらゆる種類の石を集めようと
報酬のない 果てしない努力をつづけている
傍らに立ち並ぶ人柱の群れ
遂げられずに固まった 願い
美しい思い出
やがて時が経ち
この荒野の上をふたたび太陽の光が覆う時
人びとはここに帰ってくるだろう
その時には人柱の群れも
豊かな地層の中に埋もれ
新しい人びとは
かつての思い出について
ただのひとことも話さないだろう
忘れられた
その上で 人びとは繁栄する
彼等自身が
更に新しい時代の思い出となる日に向かって
私もまた
ここにこうして
立ち つくしながら
やがて
身体全体で思い出となる
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