詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
 
数ほどあるだろうが、ひとまず私は、現代詩の成立を、その抒情の質の多様性が確保されることによって段階的になされたものだと考える。それは、旧来の日本の詩歌にあったような、はかなさ・弱さ・甘美さ・単純さへの志向から、永続性・攻撃性・粗野さ・複雑さへの志向への転換だと大まかには見ることができる。具体的な名前を挙げるなら、恐怖を重要なモチーフとした田村隆一・黒田喜夫・粕谷栄市など、性や暴力を重要なモチーフとした鈴木志郎康・吉増剛造など、不条理を前面から取り扱った天沢退二郎・吉岡実など、観念や思想や論理による抒情を展開していった谷川俊太郎・岩成達也など、社会性を積極的に取り込んでいった谷川雁・吉野弘などにより
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