詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
 
術に関する洞察の深さによって、享受体験は単なる消費を超えた深みを獲得するのである。分かり易いものばかりを消費する大衆は、表面的な快楽を求めるあまり、作品の構造の把握や作品の置かれた背景の把握などによってもたらされる豊かな芸術体験ができなくなってしまっているのだ。
 だがそれだけではない。芸術の大衆化は、ある意味芸術における悪しき民主主義であり、それは少数者を抑圧し、社会の多様性を殺して行く方向に働いている。トクヴィルが大昔に指摘したように、民主主義は単に国民の声を政治に反映させる有効な制度であるだけではなく、多数派による専制を生み出し、社会を腐敗・混乱させる可能性を蔵したものである。今や詩を書く
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