詩を救うための音楽??榎本櫻湖『増殖する眼球にまたがって』/葉leaf
いう現代社会の逆理が投影されているように思える。かつてアドルノが『不協和音』で音楽について指摘したように、現代の芸術は大衆化しており、瞬時に感覚され快楽をもたらすものばかりが安易かつ大量に消費されるようになった。大衆は、享受に際して深い教養や批評精神が要求されるものを忌避し、労働の間の余暇を心地よく過ごすために功利的な、つまり快楽の量が多いような作品を好んでいる。そして、大衆は、作品そのものの価値よりは、作品のまとっている価値の方に興味が向かい、作者や演奏者のアイドル性やネームバリュー、その作品がどんな賞をとっているかによって作品を選択するようになっている。さらには、作品を供給する出版社やレコード
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