見えたままなんて書けはしない/佐々宝砂
 
目が覚めたら朝だった
当たり前だけどね
それが当たり前の朝ではなかった

昨日洗わずに流しに放っておいたコップを洗って
牛乳を注いだら
その白がもうどうしようもなく白で
と言ったらナンセンスに聞こえるんだろうけど
とにかくとびきりの白だったんだよ
その白を飲み干したら
賞味期限切れ間近の特売牛乳だってのに
二月の霧のように甘くて重かったんだ

散歩でもしてアタマを冷やそうと
庭に出ると
あたりいちめんが燃え上がっていた
桑の木は空に向かって炎の触手を伸ばし
タンポポは地べたに燃え広がり
火傷するんじゃないかと思って
あとずさったら
踏みつけた枯れ枝の中で何か
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