見えたままなんて書けはしない/佐々宝砂
何かが蠢く
驚いて足元をみると
枯れ枝にはぎっちりと生き物が詰まっていて
その小さな生き物がいちいちみんな燃えていたんだ
家に戻って深呼吸をひとつして
もういっぱい牛乳をついだ
牛乳は冷えすぎていて薄かった
窓から見える桑の木は
ただ風に吹かれているだけだった
タンポポの黄色はそれなりにまだ美しかったけれど
さっきの鮮やかすぎる感じをなくしていた
朝はもう当たり前の朝だった
今度こそはっきりと目が覚めたのだろう
それにしても
目が覚めたのではなくて
目を閉じたという感じがしてならなかったのは
なぜだったんだろう
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