窓の断章  その一 −飛び立てない君に−/のむ
 
。それは、内部空間の充実に懸かっている。飛び立つ未来へ、外部を見つめる目 は、果てしなく幻想する。飛び立てなかった者は、窓辺に佇んで、幻想することに慣れ てしまった。飛び立つ意志も気力も失い、幻想を未来に置き換え、飛び立つことを忘れ て、内部空間に棲息ことに埋没する。
3.
  窓は、外を映す鏡である。青い空と白い雲、緑の草木と色彩々の花、季節のスライド ショーのように映し出す。飛び立たなくても、外部を映し出して見せてくれる。外部は 映し出されるように、圧倒的圧力で内部に侵入して来ようとするが、窓はその外部を遮 断する。閉ざされることで、不必要な恐怖に慄かずに内部は保護される。外と内は圧力 は
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