窓の断章  その一 −飛び立てない君に−/のむ
 
 は均衡し、安心して内部から外部を眺められうる。
4.
  窓のない部屋は、かって考えたことのない現実。完全に閉塞した空間。あのアンネ・ フランクの恐怖に慄きながら窓を遮蔽した空間とも異なる。外部を映すことも、覗き見 ることもない。窓は無視され、存在すら期待されてはいない。外への眼差しは四方を囲 む壁に阻まれ力なく落下する。窓は、閉ざされても、外への眼差しがある。窓のない空 間はその眼差しを失っている。断じて、窓は外部への眼差しである。外部と内部を遮蔽 しようと、眼差しは、外へ向かう。内から外へ、眼差しは志向ししつつ、気力を貯え、 時を待つ。高まった圧力が外へ膨張し、窓を開け放つとき、飛び立つ時が来るのだ。
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