思い出の痛みは嘘になる/ホロウ・シカエルボク
しょどうして入らなかったの?って聞かれてしどろもどろになっちゃったわ。急いでたからとか何とか、いいわけしたと思う。そしてそれがいいわけだって、ジンもきっと気付いてたと思う。でもそれ以上追及しないでいてくれたわ。そういうとこ、なんかすごく察しのいいひとだったのよ。でもそのお店はジンはすぐに辞めちゃった。すぐに辞めちゃって、それからはなにをしていたのかしばらくは判らなかった。だけどある日ひどく酔っていた日があって…その日は珍しいくらい速いペースでお酒を飲んでいて、いつもののんびりした感じとはまるで違っていた。いつもは心の底に隠しているのだろう暗い目をして、誰とも目を合わせようとしなかった。あたしはなん
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