思い出の痛みは嘘になる/ホロウ・シカエルボク
 
ば、ひと月近く会わない時もあった。ジンは、ファンタズム以外で飲む気は無いらしかった。あんまりあちこち出歩かないんだ、って言ってた。いちどファンタズムでも飲んでるひとに他の店で会ったとき、ジンがウェイターをやってるのを見た、って教えてもらった。あんまり楽しそうじゃなかったけど、女の子には人気あるみたいだったよって―ええと、ジンはね、ハンサムっていう感じでもなかった。背もそんなに高くないし。だけどね、全体の感じも、鼻も、顎も、針みたいに尖ってて、目はギョロっとしていて…ちょっとエキセントリックな顔だったのよね。だから、すごく人目は引いたわよね。あんなひとがウェイターなんかしてたら、そりゃあ気に入っちゃ
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