冬と檻光(十六の視花)/木立 悟
 

燃しても燃しても星の下に
残りつづけるまだらな鏡


牙の内の浪を疑い
咬みちぎろうとする笑みを信じた
無数の首の無いイカロスが
太陽のまわりを取り囲んだ


終わりのないはずの本の終わりに
硝子と血で書かれた古びたはじまり
幾度もうなずき 崩れる街の
上にも下にも生まれる生きもの


咽から髪へ飛び去る痛み
数光年の手旗の変化
何も信じようとしない鳥たちが
漏斗の光に散ってゆく


闇を持ち上げる手のにおい
霧の林の途切れるところ
扉と門に
いつまでも残る穂のかたち


水を混ぜる水
夜の指
丘を上る雨の瞼
こがねとこがねにはさまれ
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